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日本ワイン産業の直面している課題

1.圧倒的に少ない品種とクローン

圧倒的に少ないワインブドウ品種とクローン

「品種に勝る技術なし」。こうした言葉があるように、土地に適した品種を選び、それを植えて育てることは、高品質なワインを造るためには、とても大切なことです。適地適作の実現により、上質なブドウが収穫でき、そのブドウで上質なワインを造ることができるのです。そしてそのためには、品種の選択肢が多いこと、つまり多様な品種の苗木が十分に供給できることが大切になります。苗木は、穂木や台木をそれぞれ選んで、接木をして作られます。言い換えればこの穂木、台木の多様性が重要になってきます。

例えば、フランスでは、同じ品種でも様々な形質や特徴を示すクローンが1971年から認定されており、その数は毎年増え続け、2023年時点で1300を超えています。直近の5年間だけで約100のクローンが認定されています。ピノ・ノワールのクローンの数は50以上、シャルドネは30以上もあるのです。また最近の気候変動やEUの政策を鑑み、フランスでは2000年以降、クローンの開発から品種の開発に方針を転換しました。そして国立農業研究所とフランスブドウ・ワイン研究所(IFV)*が連携して耐病性のある新たな品種の開発プログラムに力を入れています。

このプログラムでは、すでに56品種が開発されており、そのうちの4品種*がフランス農務省に認証されているのです。現在フランスでは、フランス原産品種に加えて、開発された新品種、国外原産の品種が登録されており、2024年時点で登録された品種の数は422種類を数えます。

これに対して、そもそも日本では、在来品種自体が2品種しかなく(野山に自生する野生ブドウは除く)、国レベルでの海外の品種の導入は実施されていません。そのため、ワインやブドウの生産者が、使える品種やクローンの数がフランスに比べると極めて少ない数字になっています。

*1IFV
*2 アルタバン、ロレアル、ヴィドック、ヴォルティスの4品種は2018年、フランスの農務省傘下のフランスアグリメールに認証された。

2.苗木のクリーン化の必要性

苗木のクリーン化の必要性

新設か既存かに関わらず、ブドウ園に植える苗木は、病害虫に侵されていないことが大切です。ベト病や晩腐病などを引き起こすカビも好ましくないものですが、ウイルスはカビとは違った意味で厄介です。ウイルスの病徴は、ウイルスの種類、またウイルスが宿主としたブドウ品種、そのブドウが植えられている土地によって症状の出方が異なります。感染直後にはなんの症状がなくとも、ボディーブローのように効いてきて、10年後にブドウが突如深刻な症状に陥ってしまう場合があるのです。またウイルスの種類によっては、糖度の上昇や着色を妨げたり、収量が減少させたり、ひどい場合には枯死させるようなものもあります。

ウイルスの中でワイン用ブドウにとって深刻なのが、リーフロールタイプ3というウイルスが引き起こす病症です。このウイルスに感染すると、名前の通り、葉っぱは丸まります。さらには赤くなったり、緑がまばらになったりして、光合成が阻害され、ブドウ自体も糖度は上昇せず、酸は高くなり、ブドウの実の着色が悪くなります。時には収穫量も減少します。 

このリーフロールタイプ3というウイルスは、カイガラムシという小さな虫を媒介として広まっていきます。そしてウイルスに感染している樹とそうでない樹が隣り合わせになっていると、感染はどんどん広がっていきます。

ウイルスに感染したブドウ樹からウイルスは取り除けません。また苗木を植えてしまったら、植え替えには、金銭面でも労働面でもコストがかかります(ブドウは植え替えから収穫までには3年以上かかります)。さらにはブドウ園の一部のみを植え替えると様々な畑での作業管理が難しくなります。最後に媒介虫であるカイガラムシの完全に駆除するのは、不可能です。

こうしたことは、苗木生産者の苗木畑にも言えることです。現在の日本では穂木を苗木生産者に預けて、苗木生産者が持っている台木と接木して苗木を生産するケースも増えていますが、感染しているブドウ樹の穂木が持ち込まれると、その穂木から苗木生産者の台木にウイルスが広がっていくリスクもあるのです。言い換えれば、いくらウイルスに感染していない穂木を送っても、もし苗木生産者の台木が感染していれば、その逆もありうるわけです。

つまり日本で流通する苗木をできる限り健全にしていくのが必要なのです。

苗木のクリーン化の必要性

ブドウ園を新しく作る場合でも、すでにあるブドウ園に苗木を植える場合でも、その苗木が病害虫に侵されていないことが重要です。特に、カビが原因のベト病や晩腐病も問題ですが、ウイルス感染はさらに厄介な課題となります。

ウイルスによる病気は、ウイルスの種類や感染したブドウの品種、栽培環境によって症状が異なります。感染してもすぐには目立った症状が出ないことがあり、気づかないまま時間が経ち、10年後に突然深刻な問題が発生することもあります。また、ウイルスによっては、糖度の上昇を妨げたり、果実の着色を悪くしたり、収穫量を減らしたりするものもあります。ひどい場合には、樹が枯れてしまうこともあります。

深刻な影響を与えるウイルス「リーフロールタイプ3」

ワイン用ブドウにとって特に深刻なのが、「リーフロールタイプ3」というウイルスです。このウイルスに感染すると、葉が丸まり、赤く変色したり、緑がまだらになったりします。その結果、光合成が阻害され、ブドウの糖度が上がらず、酸が高くなり、果実の着色も悪くなります。収穫量が減ることも珍しくありません。

このウイルスは「カイガラムシ」という小さな虫によって広がります。感染したブドウ樹が健全な樹と隣り合っていると、ウイルスはどんどん広がってしまいます。一度感染すると治すことはできません。

苗木の感染リスクとその影響

感染した苗木を植えてしまうと、後から取り除くのは非常に大変です。

  • 植え替えには多額のコストがかかる
  • 収穫までに最低3年以上かかる
  • 一部の苗木だけ植え替えると、畑の管理が複雑になる
  • カイガラムシを完全に駆除するのは不可能

また、苗木を生産する過程でも感染リスクがあります。日本では、穂木を苗木生産者に預け、生産者が台木と接ぎ木して苗木を作るケースが増えています。しかし、もし感染した穂木が持ち込まれれば、生産者の台木にもウイルスが広がります。逆に、健全な穂木を使っても、台木が感染していれば、苗木がウイルスに侵される可能性があります。

健全な苗木の流通を目指して

このようなリスクを防ぐため、日本国内で流通する苗木をできる限り健全なものにすることが必要です。苗木のクリーン化を徹底し、ウイルス感染を防ぐことで、日本のブドウ栽培とワイン生産の未来を守ることにつながります。

3.栽培に関する知見不足

栽培に関する知見不足

経験が乏しい異業種からの参入

JVAの調査によると2014年に249軒だった日本のワイナリー数は、2024年には540軒前後になりました。つまりワイナリーの数は10年間で倍以上になっています。そしてその背後では、ワインブドウの栽培を手がける人たちが、それ以上に増加しています。ワインブドウ栽培に携わるかなり多くの人たちが新規参入者。つまり、現在、日本でワインブドウの栽培に関わる人の経験は必ずしも豊富ではない、つまりかなり限定されていると言っていいでしょう。

こうした人たちの大半は、異業種から参入した企業や個人です。企業ならば飲食関係、福祉関係の会社など、個人ならば銀行員、証券マン、医者、教師、料理人というように、昨日まで農業に全く触れたことのない人が、ブドウ栽培に関わるケースも多いのです。しかもどちらかというと40代以上の人たちが多いのも実情です。

醸造中心だった研究

日本のワイン産業は、栽培よりも醸造にフォーカスして研究が進んできました。ワイナリー自体がある程度まとまった面積で本格的にワインブドウの栽培に取り組むようになったのは、わずか20年足らず。それまでは、ワインの原料となるブドウの栽培は、契約農家であるブドウ生産者任せでした。同様に、ワインブドウ栽培やワインブドウの病害や虫の研究を専門にする研究者は、日本にはほとんどいないと言っていいかもしれません。

特異的な日本の気候

また日本の気候は海外の伝統的なワイン産地のそれとかなり異なっており、海外の知見が必ずしも通用しません。加えて、日本列島は、南北に長く、気候も多様。各地におけるワインブドウ栽培地の品種の適性を検討していく必要があります。

こうした課題に取り組む研究者がいないのですから、当然、ワインブドウの栽培を学ぶ場もありません。海外に比べて、ワインブドウの品種、クローン、栽培管理、病害など、ワインブドウ栽培に関する知見が圧倒的に不足しているのです。

さらに、こうした専門家が不足しているため、ワインブドウの栽培を体系的に学ぶ場がほとんど存在しません。海外と比べると、日本ではワインブドウの品種やクローン、栽培管理、病害対策などに関する知見が圧倒的に不足しており、これが日本のワインブドウ栽培の大きな課題となっています。

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