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2024年3月9日 日本ワインサミット参加レポート

2024.3.09

2024年3月9日 日本ワインサミット参加レポート

3月9日に山梨県 常盤ホテルで開催された「日本ワインサミット」の模様をレポートでお伝えいたします。

「日本ワインサミット」は日本ワインの魅力の発信を目的として山梨県が主催し、定員の300名が満席となりました。開会に際して、長崎幸太郎山梨県知事、日本ソムリエ協会会長の田崎真也氏が挨拶。本イベントが、山梨「ワイン県」宣言5周年を記念したものであること、山梨県が日本のワイン業界を牽引する意義などが語られました。

トークセッションはコーディネーターの田崎真也氏と酒類総合研究所から後藤奈美先生、その他全国から幅広く5名の生産者が登壇されました。
・三澤 彩奈氏(中央葡萄酒 / グレイスワイン)
・赤尾 誠二氏(都農ワイン / JVA理事) ・玉村 豊男氏(ヴィラデストワイナリー)
・松田 旬一氏(高畠ワイナリー)
・山崎 太地氏(山崎ワイナリー)

左から赤尾氏、三澤氏、玉村氏、田崎氏、後藤氏、松田氏、山崎氏

 

「日本ワインの未来」というテーマで、各地のワイン造りについて、後藤先生や田崎氏からのコメントも踏まえながら説明がありました。その途中で三澤氏が発した「ワイン造りは産地の宝を探すようなもの」という言葉が本サミットのキーワードとなりました。当日の内容をもとに、会員のみなさまにはワイン造りに活きる情報を抜粋してお伝えいたします。

 

北海道:山崎ワイナリー

ピノ・ノワールは19年迄は補糖なしでアルコール度数11.5%だったが、今では14%まで上がるようになった。一方で、病気や虫の出方も変わってきていると感じる。pHと熟度のバランスも変わってきているので収穫期の判断の重要度が増している。醸造の観点でも、気温の上昇によりプレス後の野生酵母の管理が必要になることが増えた。未来に向けては、ワインを通じた「空知地域の活性化」を進めたいとの想いも語っていた。

 

宮崎県:都農ワイン

年間降水量4,000mm。火山灰土壌で水はけがいい。海が近いため35°Cを越えず、風通しもいい。暗渠/レインカットを実施。また堆肥での土づくりや草生栽培も実施し、品種によって列方向を変えるなどの工夫もある。加えて近年では夜温が下がらず、ベーリーAの栽培が難しくなっており、ビジュ・ノワールへの転換も進めている。
冷涼地に比べ反収が多く(9.5haあたり80t、山崎ワイナリーは14haあたり49t)、甲州でも甘く華やかな香りが出るのが「九州らしさ」ではないかという意見があった。 山形県:高畠ワイナリー山形の宝は「寒暖差」。寒暖差ゆえに、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培にも挑戦できるからだ。山形は平均気温は低いが、夏は暑い。昔からデラウェアなどがラブルスカ系品種の栽培面積が多く、ワイナリーとしても老舗。機材を新調しながら小仕込みにも挑戦しているが、溶存酸素量管理などの難しさを感じている。

またラブルスカ系のベーリーAについては、山梨よりバラ房で酸が残る印象とのことで、同エリアのワイナリーによる35%セニエでのワイン造りにも触れていた。また山形のデラウェアの遺伝子が50%ヴィニフェラ由来であることについて、田崎氏からは耐病性が高く反収も多い品種として期待が寄せられていた。

 

山梨県:中央葡萄酒 / グレイスワイン

山梨の産地の特徴は多様な土壌、丘陵地が多いこと、そして圃場の標高の高さである。また品種についても甲州に想いを持っているワイナリーが多く、自身も産地や土地を守るという考え方を持つようになってきた。そのなかで有機JAS認証の取得やピエ・ド・キューブ、土着の乳酸菌を活用するなどの取り組みを進めてきた。

また後藤先生からは日本ワインコンクールや山梨県ワイン酒造組合の製造マニュアルについて言及があり、山梨が産業としてワイン業界を牽引していることの重要性が語られた(製造マニュアルは県外からも購入可)。

 

長野県:ヴィラデストワイナリー

かつては冷涼でブドウ栽培が困難だったが、現在は急速に産地形成が進んでいる。特に千曲川ワインバレーは移住者によって形成される産地というのがユニークなポイント。それを担うのが千曲川ワインアカデミーだが、アカデミーの最終授業では「自分とワイン」を語る課題を課している。3,500円のワインを売るためにはそのストーリーが必要であり、その販売価格がワイナリーを維持するために必要なものであると伝えているとのことだった。

 

 

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