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温暖化に伴う畑作業の新たな在り方を考える

2024.9.09

温暖化に伴う畑作業の新たな在り方を考える

今年は全国的に猛暑が続いており、東北、北海道を除けば日中は35°Cを越える日が当たり前になってきています。今までにない高湿な気候下で自らの身を守るための畑作業の在り方について、気象学者の荒木健太郎気象庁
気象研究所主任研究官に話を聞きました。

①気象情報の把握に使えるツール
「気象情報」にはさまざまな見方があります。気象庁HPの「防災情報」欄では、1時間、1日、1週間などの時
間軸、最高気温、最低気温、雨量や雨雲などの情報、実測と予測などさまざまな角度から気象情報を見ることができます。また、通常の天気予報の情報だけでなく、「早期天候情報」、「季節予報」というものがあります。
早期天候情報は6日後~14日後までを対象として、例年比で気温が非常に高温、非常に低温、降雪量が非常に
多い場合などに配信されるアラート。季節予報は1ヵ月、3ヵ月の単位で気温や降水量などの傾向が掲載さ
れ、県単位で確認することも可能でシーズンの大まかな傾向を掴むことができます。

②畑作業で気を付けることと対処法
また、最も重要な情報は、気象防災欄の熱中症警戒アラートだと荒木氏は指摘しています。
熱中症は、湿度なども発汗に影響を与えるため、単純に気温で見るより「暑さ指数」を基準にします。熱中症
警戒アラートも暑さ指数を基準としており、28以上で屋外作業は可能な限り避ける、31以上は外出を避けるという指針が出されています。

一方で、28以上で作業ができないと、今の日本のブドウ畑の管理は立ちゆかなくなるので、作業をする際にどのように対処すべきかを教えてもらいました。

日常的な畑作業について
・できれば複数人で作業をすること(最重要項目)
・水分や塩分補給のタイミングのルール化
・暑さ指数を参考に、早朝/夕方に作業を実施
・スマートウォッチで熱中症や深部体温上昇アラートを設定
・首元に着けるクールリングや冷却服を利用
・ハンディファンは35°C以上の環境下では熱風を送ることになり、かえって悪影響を及ぼす
・近くにクーリングシェルターを用意 (屋内のエアコンが効いた環境を用意する)

屋外イベント実施に際して
・普段デスクワークが中心で、夏季の外での作業に 慣れていない人が参加する場合には、暑熱馴化の依頼(イ
ベントの一カ月前から屋内での適度な運動や浴槽に浸かるなどによって暑さに慣れてもらう)
・日傘の提供や参加者への定期的な声掛けを実施。子供、高齢者は特に注意喚起が必要(子供は照り返しで
大人以上に暑さに晒されており、高齢者は発汗能力などが下がっている可能性がある)

 

<荒木 健太郎 プロフィール>
気象庁気象研究所主任研究官。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、豪雨・豪雪などの気象災害をもたらす雲の仕組みを研究。映画『天気の子』、ドラマ『ブルーモーメント』気象監修。『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』、『雲の中では何が起こっているのか』など著書多数。

 

註釈1:気象庁では、。夏季のイベントに関する熱中対策のガイドラインを発表している。
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/gline/heatillness_guideline_3.pdf

註釈2:当日の暑さ指数を把握することやアラート発令を把握するためのメール配信サービスもある。農林水産省では、農林漁業者向けスマートフォン・アプリケーション(MAFFアプリ)を開発。熱中症警戒アラートが発せられるとアプリの使用者に通知がいくようになっている。以下からダウンロードできる。

 

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